プロジェクト名称

ソーシャル・クリエイティブ・プラットフォーム わわプロジェクト

運営団体

一般社団法人非営利芸術活動団体コマンドN

名称の由来

「わ」という音には、「和」「輪」「環」「我」「倭」といった関係性を表す意味が多く含まれています。私たちは多くの「私」が大きな「わ=街」をつくることを願い、活動の名前を「わわ」と名付けました。

*東北地方の方言のひとつで、「私」を「わ」といいます。すなわち「wawa」という音は、「私は」を意味します。

沿革と目標

東日本大震災を機に生まれた、創造的に活動する人たちをつなぐプラットフォーム。東日本大震災や原発事故によるカタストロフィや手繰り寄せられた社会課題に対し、立ち現れている人間の創造力、アイデアやしくみをつなぎ、個々の創造性を喚起・活性化させるための活動を行っています。これまでには、アーティストやクリエイター、現地の活動家らによる多様な支援・活動を紹介する展覧会「つくることが生きること」、震災を機に考えはじめたさまざまなことを共有し語り合うためのきっかけとなる「3.11映画祭」、復興へ向かう創造力をつなぐフリーペーパー「わわ新聞」の発行などを行っています。このような活動を通じ、非常時に生きるネットワーク・コミュニティが日常の中に構築され、個々が現実にコミットし創造力を発揮する豊かな社会づくりに寄与することを目指します。

事務所所在地

community space & gallery KANDADA3331
〒101-0054 千代田区神田錦町2-1 (Google MAP
TEL 03-3518-9101  FAX 03-3518-9101
MAIL info@wawa.or.jp

メッセージ

震災で変わった風景と変わらない風景がある。人間が作り出し、自然に逆らうように存在しているものと、寄り添うように存在してるもの。変わらないことが正しいのか? 変わることが正しいのか? 今、私たちはその創造力と決断力を問われている。

 今こそ、文明の傲りを正し、自然と共生する新しい文明の指針を示さなくてはならない。日本という国家観や、自然観、宗教観、生活観を根源的に問いたださなくてはならない。

「すべてを失い、怖いものはなにもない、犠牲者に恥ずかしくない行き方をしたい」と、吉里吉里の芳賀正彦さんはインタビューに答えてくれた。瓦礫から被災者自ら薪を作り販売する「復活の薪」プロジェクトを立ち上げ、地元の山林(資源)を整備できるように技術を教えるプロジェクトを設立したその強い人間力と生きた哲学には、自然と共生するためのひとつの答えが明快に見える。「里山から出た薪で質素な生活を続けること、そして自然の恵みを授かる術を身につけ、おのれに揺るぎない誇りを身につけること」という言葉には、豊かさの本質を突きつけられ、心に響く。古来、里山や里海という考えには、自然を尊重し、伝統的に自然体系に適切な規模で管理することで、自然災害を受け入れ、回復する方法があった。芳賀さんが言う「質素な暮らし」には里山、里海と共生する、傲らない文明の基層文化が読み取れる。「質素」とはこのうえなく「豊か」なことである。

 では、都市においてはどうであろうか?

「わわプロジェクトプロジクト」の活動拠点であるアートセンター「3331 Arts Chiyoda」がある千代田区練成公園は、旧東京市の面積の約40%、横浜市の面積約90%が消失し、死者10万人あまりを出すという大惨事であった関東大震災の震災復興公園として1931年に開園している。当時の政府は、震災復興のために大公園を3ヶ所、小公園を52ヶ所、設置している。小公園は小学校などの用地と併せて設け、公園と校庭の確保という問題を同時に解決しようとした。練成公園もこの震災復興小公園のひとつであった。「3331 Arts Chiyoda」は、公園と廃校となった学校をデッキでつなげ、関東大震災の復興計画の意図を継承・発展させた。実際、3.11当日には、この練成公園と元学校が空間的に連動することで避難誘導、帰宅困難者の対応がスムーズに行えた。約80年前の復興計画が具体的に機能したといえる。

 成熟社会から循環型社会へ、時代の節目となる転換期であると同時に、首都直下型の地震が発生する確立が70%と発表されている現在、行政の縦割型意思決定プロセスだけではなく、都市という生態系を読み解く領域横断の意思決定のプロセスが必要である。そのためにも画一的な文化意識に陥らないために、過去を参照し、文化の多様性を認め、街の自治組織が自発的に動き出すシステムやプログラムを開発することが希求される。

 私は戦後のやけ野原は経験していないが、今回の東日本大震災という未曾有の経験は、私たちの国家やその仕組のあり方を問い直し、もうひとつの価値や考え方に「気付き」の機会を与えてくれた。今だからこそ、想像を絶する果てしない宇宙の渦の中で、今ここに「わたし」が存在していることの確かさをいかに感じ取るかが大切だ。「わわプロジェクト」は、そのためにも絶望をエネルギーに変え、創造力をもって表現・活動する人たちを支えるプラットフォームとして起動した。変わることも変わらないことも創造のプロセスとしてすべて受け止めることからはじめたい。そして、この活動を通じ、3.11を契機に見え出してきた私たち人間の創造力と表現の本質を問いたいと思う。

わわプロジェクト・ディレクター 中村政人 (2012.7)

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