未来会議inいわき 対話で育てる未来の種

2014年11月21日

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複雑な状況を
抱える地域

 未来会議が開かれている福島県いわき市は、太平洋に面した中核市です。震災では、地震の被害に加え、津波により300名以上の命が失われ、その後起きた原発事故により、自主避難、複数のコミュニティー混在、風評被害、子育てや健康への不安、生活の変化、差別など多くの問題が引き起こされました。いわき市の人口は減少していく一方で、双葉郡からの長期避難者や原発作業員など約3万人の人々が一緒に生活するようになるなど、震災から3年以上が経過した現在も、被災は未曾有のまま様々な形で残っています。こうした状況は、被災の違いや賠償問題、復興や風評、放射能汚染への安全性に対する捉え方などの違いを分断に変え、お互いが大切なものを守ろうとすればするほど、溝が深まる構図を作り出しています。

多様性を前提とした対話の場づくり

 このような複雑化した地域においては、いろいろな価値観があり、一人ひとりが異なるということを前提に、互いの課題や現状を共有し、その背景に耳を傾けあう中から生まれてくる小さな気づきを大事にしながら、この状況とどう向き合っていくかを多様な人々が一緒になって考えることが出来る「場」が必要であると私たちは考えました。そして、誰もが安心して参加しやすくするためにファシリテーターを介在させ、相手の話は否定せずに聞き、話したくないことは話さなくていいというルールを取り入れた対話の場「未来会議inいわき」を2013年1月よりスタートしました。第一世代である私たちが事故収束に向う福島を次世代にどう受け渡すかを視野に入れ、この対話の場は30年間続けることを目指しています。

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それぞれの
未来の種を育む

 未来会議はこれまでに8回の開催を数え、双葉郡の方や原発作業員、県外の方なども交えながら、子どもから大人まで毎回80名程参加者でいくつかのテーマを設定した対話を行ってきました。分科会やコラボ企画なども月1程のペースで開かれ、旧警戒区域を地元の人自らが案内するツアーや人口増加でより深刻となった医療問題に取り組むグループなど、いくつかの動きも出てきています。福島で起きていることはどこにでも起こりうることであり、今後も地域や溝を越えて人と人が共に考えるフラットな場として「未来会議」を開き、物事の根底を見つめていきたいと考えています。そしてこの場が、参加者一人ひとりが持っている未来の種を育て、それぞれの人生の豊かさを深めることに少しでも役立てばと思っています。

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ワールドカフェなどの手法をとりいれた対話を続けています。

http://miraikaigi.org/

文/藤城光(デザイナー・アーティスト)
いわき市在住。インスタレーション等を制作。ふくしまの声PRAY+LIFE主催
http://praylife.net/

 

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