ビルド・フルーガス

活動地域:宮城県塩竈市

インタビュー:高田彩(たかだあや)/ビルド・フルーガス

北米と日本を中心に、ユニークな活動を行うアーティストに注目し、交流を図ることを目的としたプラットフォーム。2006年には、“人とアートが出会う場”として『ビルドスペース』をオープン。さらに翌年には出張ワークショップ『飛びだすビルド!』も開始。震災後、被災した地域を中心に子どもを対象とした 『飛びだすビルド!』を実施している。今後は『ビルド・フルーガス』を通して若者の集結を図り、エネルギーが必要な “まちづくり”に役立てたいと考えている。


人間が持つ発想力や機動力を信じて
一瞬一瞬、楽しい時間と記憶づくりを

アートや文化の意味を問い直す

2006年、”人とアートが出会う場”として塩竈市に誕生した『ビルド・フルーガス』。国内のアーティストはもとより、北米のアーティストたちとも繋がりを持ち、展覧会や子どもたちを対象にしたワークショップを開催するなど、ここから多くの”出会い”が生まれている。港町である塩竈市は津波の被害により、大きな被害を受けた。沿岸部にある『ビルドスペース』も例外ではなく、建物の倒壊は免れたものの、1m80cmの高さまで浸水。そうした状況の中、いち早く高田さんが動いたのは、震災以前から行っていた『飛びだすビルド!のワークショップ』だった。

「震災前に、宮城県の作家とともに幼稚園や文化施設でワークショップを行っていたんです。私たちが訪れた幼稚園などが多く被災してしまったので、すぐに駆けつけて最初は物資支援をさせていただきました。その後、子どもたちが少しストレス発散できるようなワークショップをしたり、配給会社の方にご協力いただいて上映会を開催したり、純粋に楽しめる時間を提供することがありました。自分自身の精神状態や、スペースも被害を受けていたので、すぐにこれまで行っていたような展覧会はできませんでした」

体験したことのない不安に襲われる中、ワークショップを行いながら、高田さんはこれまで携わってきた”アート”や”文化振興”の本質を自分に問いかけていた。

「これまでになかった経験をしたので”アート”と自分の立場をすごく考えさせられました。とくに、本当の意味での”文化振興”とは何か? どういった人とこの時代を生きていきたいのか? ということを考えていました。私はアートに携わっています。私を取り囲む人たちもアートに携わる人たちなんだとしたら、一緒に関わって行くアーティストの価値観や意識を共有していかないと、意味のある”文化づくり”や”人づくり”はできないんだと気づきました」

未来を背負う若者たちと
この町に楽しい瞬間をつくりたい

高田さんがアートに携わるきっかけは、”アートの力を借りて、社会を少しでもより良く、楽しく生きたい”という想いから。津波が押し寄せた町を目の当たりにし、「塩竈がなくなってしまうかもしれない」という不安に襲われた震災以後、その想いは一層強くなっていく。

「”アート”が指すのは美術作品だけではないですよね。私は人の力、発想力や機動力を信じています。これからどう生きるか? という不安と直面しながらも、アートを活用して一瞬一瞬でも楽しい時間と記憶づくりをしていきたい。今後はワークショップなど、顔が見えることをやっていきつつ、『ビルドスペース』ではこれからも良い作品を提示し、”そこで生まれる何か”を信じて進んでいきたいです」

震災直後から子どもたちに文房具を届けたり、ワークショップを行ったり、”被災地の今”を伝えるために各地でイベントに参加したりと、自身のネットワークを活用して動き続ける高田さん。そうした活動の中で、自分の町・塩竈のこれからを考えるのは自然なことだった。

「塩竈は小さい町なんですけど、漁港だったり、鹽竈神社という社(やしろ)の文化があります。あらゆる人が町の財産をいかそうとがんばってきた町です。震災以後、”塩竈っていいな”と愛おしくなる瞬間が多くなったんですよね。経済的な復興に貢献できるかどうかわかりませんが、今後は自分と同じように活力を持ってがんばる若者とは対話していきたいと思っています。何をするにも、今若者が動かないとエネルギーが続きません。その中で、フットワーク軽く動ける人材をビルドを通して集めていきたいですね。それは、塩竈を離れて暮らした若者でもいいんです。この場所にそのエネルギーを落としていくような活動をしていきたいです」

取材日:2011年6月30日 宮城県塩竈市にて
photo: Reiji OHE

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