南三陸町のもうひとつの物語 「山とともに生きる」

2015年2月27日

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南三陸町は分水嶺に囲まれた町。この町に降った雨や雪はすべて志津川湾に注ぐ。海は山からの恵みで育まれ、山は海からのヤマセで育まれる。この地に住まう人は、昔からこの自然とともに生きてきた。
あの津波を越えるエネルギーも、そんな暮らしで育まれた「しなやか」な強さだと感じる。ある日、町の若者たちと防潮堤建設現場に立った。すると一人が大声で「いい眺め!」と叫ぶと全員が斜面を駆け上がり、その高さからの眺めを確かめ、この眺めを活かした施設について語り始めた。すべてを前向きに受け入れるエネルギーこそ、山や海からの恵みであると感じる。
町は再生の道を歩んでいるが、山に入ると別の時間が流れる。人の命をはるかに越える時空を生きる木々が、町の基盤を支えるごとくそびえ立つ。この地は伊達政宗に見出された林業地であり、特有の気候が少し赤みを帯び身が詰まった背の高い木を育む。いま世界基準の森林認証FSCを取得し、様々な製品を造り出す産業を興そうと動き始めている。
「南三陸を山から語る」プロジェクト。薪炭林、茅場、そして林業。人が山を畑にした時代には、イヌワシを頂点とする豊かな生態系がここにはあった。いま、林業を強くすることが答えを導くと信じて、老若男女が世代を越えて山とともに生きる町を創造する。
僕は、この町の人たちと一緒に想いをカタチにしながら、地域の大切な資産、守りたい情景、記憶の風景を撮る。

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長伐期の山も緊急時は命を繋ぐ道になる

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12代続く南三陸の林業家

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静かに佇む林業地より志津川湾を望む

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山里の魅力を楽しむ縁がわアート

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250年の歴史を持つ入谷の打囃子

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自然と共生する町づくりを提案する「かもめの虹色会議」

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山の歴史を語り未来を確かめる夜

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雪化粧した土場で出番を待つ

写真・文/川廷昌弘(かわてい・まさひろ)
1963年兵庫県芦屋市生まれ。日本写真家協会(JPS)会員。博報堂CSR推進担当部長。一般社団法人CEPAジャパン代表。「地域の大切な資産、守りたい情景、記憶の風景を撮る。」をテーマに活動。阪神淡路大震災で被災。故郷を撮り続け写真集を出版。森の国でもある日本の地域産業を考えるべく三重県の林業家を撮影し、現在は南三陸の林業を撮影中。環境問題から震災復興まで取組み地域づくりにも携わる。

 

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